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近年の景気低迷による税収の落ち込みから、地方自治体の財政危機が深刻化している。そうした状況を背景として、民間セクターが持つノウハウや資金を活用して社会資本の整備を図る手法として、PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ)という事業スキームが注目を集めている。
PFIとは、一言で言えば従来公的セクターが担ってきた事業を民間セクターにアウトソーシング(外部委託)することによって「小さな政府」の実現を目指すものである。
PFIは「行政改革先進国」英国を発祥とするが、我が国においてもその導入、促進を図るべく昨年五月に自民党から議員立法によりいわゆる「PFI促進法案」が国会に上程されたところである(継続審議中)。
しかしこの法案については問題点も多く指摘されている。一例を挙げれば、この法案では事業主体となる民間事業者に対して国あるいは地方自治体による出資や債務保証の道が開かれているが、これは官民の事業リスクの適切な配分というPFI本来の長所を減殺するものであり、責任の所在が不明瞭になることによってバブル期に安易に乱立した第三セクター事業の二の舞ともなりかねないことを懸念する見方も多い。
とはいえ、PFIというスキームそのものは、厳しい財政事情の下で、増大する住民の行政ニーズに対応しなければならないという、地方自治体が今まさに直面している相反する命題の解決を可能にするものとして期待されている。その意味でも、このスキームを英国とは歴史、風土の異なる我が国に移植しうまく根づかせるためには、PFI事業の中心的な担い手となるであろう地方自治体の果たす役割がきわめて重要になる。
21世紀政策研究所では現在、地方自治体の行政改革に関する提言をとりまとめているところであるが、その骨子は、自治体の行政活動にPLAN→DO→CHECKという一連のサイクルをビルトインすること、具体的には、@政策形成能力の向上(PLAN)A事業効果の向上(DO)B説明能力の向上(CHECK)という「三つの改革」を自治体が主体的に進め、自らの経営能力を高めることによって住民本位の自治の確立を図るというものである。
PFIの目的は「顧客」である住民に費用対効果の面で優れた高水準の公共サービスを提供すること(バリュー・フォー・マネー)にあるが、その目的の実現のためには、この「三つの改革」を通じた自治体の経営能力の向上が、不可欠である。
具体的には、民間企業の参入意欲を高めると同時に競争原理が働くようなプロジェクトの企画能力(PLAN)、事業リスクの適切な配分、すなわち官民双方の役割分担と権限、責任の明確化による効果と効率の追求(DO)、そしてプロジェクトの全般にわたる透明性を確保するための住民への説明責任(CHECK)、という一連のプロセス全体をマネジメントする能力が問われる。その意味では、PFIは自治体の経営能力を測る試金石となるといえよう。
PFIは両刃の剣である。うまく使えば住民本位の効果的・効率的な行政サービスの実現につながるが、安易に流れれば第三セクター事業と同じ轍を踏むことになる。そしてその成否は自治体の経営能力のいかんにかかっているのである。しかし見方を変えれば、PFI事業に積極的に取り組むことを通じ「実戦経験」を重ねることによって、自治体の経営能力そのものが鍛えられるということもできるのではないだろうか。
地方自治のありかたに関しては地方分権の議論が先行しがちである。確かに中央省庁に予算と権限を握られているため、「三割自治」といわれるように自治体が自らの裁量でマネジメントできる範囲は実際にはそれほど大きくないというのが現状である。しかし、「明日を創る挑戦市役所」をスローガンに行政改革を実践している末吉興一・北九州市長が「国の縦割りを批判する前に、自らが率先してこれを改めていくことが大切だ」と述べているように、初めに分権ありきではなく、まずは自らできるところから改革を進め自治体の経営能力を向上させていく努力も必要となる。 地方分権と自治体の自己改革はいわば車の両輪であり、両者があいまって初めて「真の住民自治」という言葉が現実味を帯びてくるのである。
99年1月6日付読売新聞朝刊「論点」掲載
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